あの頃の音と蘇る記憶
お盆入りの8月13日、終戦80年特別企画として蓄音機コンサートを開催しました。


テーマは「〜混乱から復興へ〜」 終戦直後の食料難から高度経済成長期突入までの10数年を、当時の流行歌と共に振り返りました。
(演奏曲目)
〜リンゴの唄、夢淡き東京、東京ブギウギ、銀座カンカン娘、桑港のチャイナ街、長崎の鐘、リンゴ追分、君の名は、有楽町で逢いましょう、月光仮面はだれでしょう〜(何枚かのレコードは、地域の方からの寄贈品なんです)
蓄音機は入居者の皆様とほぼ同世代。陶器のように割れやすいSPレコードの上に鉄針を乗せ、針先の振動を増幅させて音を出すという不思議な構造です。動力は手動のゼンマイ仕掛けで音量調節もできません。ゼンマイが解けてくると回転スピードが遅くなり、音楽までスローになるといったハプニングも蓄音機ならではの面白さ!?レコードの溝を鉄針が通る際の”シャー”というノイズ、その中から浮かび上がる歌声も「そうそう、この音!」と皆さん懐かしんでおられました。


〜歌は世につれ、世は歌につれ〜 という言葉もありますが、会場内のあちらこちらから当時の世相を反映した感想が飛び交っていました。「あの頃は銀座の〇〇で働いてたんだよ」「私が生まれた年の歌だったんだ!」「あの頃は大変だったなあ」「同じレコード持ってたのよ」「歌のように私も有楽町でデートしたわ」等々、この時間だけは入居者の皆さんも『あの頃に』タイムスリップしたかのようでした。


沢山の思い出話にも花を咲かせながら、あっという間に1時間が過ぎました。コンサートが終了し後片付けをしていると、男性入居者のTさんから声をかけられました。「月光仮面の歌を聴いていたら涙が出てきた。あの頃は家にテレビがなかったから、近所の電気屋のテレビの前にみんな集まって食い入るように見てたんだよ。いい思い出になった、ありがとう!」
学生時代、特に現代史は時間切れで深く学んだ記憶がありません。まさか戦後80年が経過した令和の時代に、入居者の皆さんから「生きた現代史」を学ぶとは思ってもみませんでした。
こちらこそ、「沢山教えて頂き、ありがとうございます!」
齢80を越えた蓄音機と、我が身を削りながら音を奏でるレコード。入居者の皆さま共々、体を労りながら次の演奏会でまたお会いしましょう。